親指が宇宙大に拡大していくような感覚
多分小学生の高学年くらいの頃の話です。
そのころ、私は目を閉じると自分と世界の境界線が分からなくなる、というのを体験していました。
それは、寝ようとして部屋を暗くし、目をつぶるとはじまります。
まず、自分の意識が手の親指の先とか、先端のどこかの一点に集中します。
そこから、親指がどんどんと膨張していって、自分の身体を飲み込み、部屋いっぱいに広がり、加速度的に拡張を続けて宇宙いっぱいにまで果てしなく広がっていってしまう、というイメージで、毎晩毎晩繰り返し同じようなイメージを見ました。
目を閉じるとそのイメージにとらわれてしまい、怖くて夜なかなか寝付けず、一人じっと耐えているうちに疲れ果てて眠りに落ちる…という日々を過ごしていました。
親に話しても全く理解してもらえなかったので「これは人に相談してもダメだ」と思って、とにかく体を丸めて小さくなって両手で身体を抱きしめることで、果てしなく拡大してしまうイメージを食い止めようと頑張っていたような記憶があります。
目を開けるとうっすらと部屋の様子が目に入るにもかかわらず、拡大してくイメージにとらわれたときは同時に真っ暗な世界も見えていました。
実際に目に入る光景と、脳内で再生されるイメージとが二重露光のように重なって一度に見えている感じ。
真っ暗な世界の中で、体の一部に意識が集中するときは脈打つ血管や赤血球のようなものが見え、
どんどん膨張して宇宙まで行くと銀河に広がる無数の星がきらめいているのが見えました。
地上から星空を眺めるのとは全然違って、あたりは果てしなく真っ暗で、圧倒的な空間の広がりのかなたに星が瞬くのが見える感じで、私は重力から解放され宇宙そのものになっているような感覚でした。
しばらくするとだんだんそのイメージを見ることもなくなり、落ち着いて眠れるようになりました。
今でもたまに、自分の体の一部に意識がぎゅーっと濃縮される感じとか、宇宙と一体化してしまうような感覚を覚えることがありますが、違和感があるだけで恐怖はなくなりました。
自分の身体の物理的な境界線が正しく認識できなくなる感覚は、本当に怖かったなぁ…
親指にできたささくれを間違えて引っ張ってしまい、血が出てしまったのをぺろりと舐めていたらそんなことを思い出しました。
ささくれって地味に痛いですよね。
キノコでした。