右手の親指が宇宙になるまで
ふと思い出した、子供の頃に怖かったこと。
小学校3年生くらいの頃だったと思う。
夜、目を閉じると繰り返し同じイメージが頭に浮かんで、怖くてしばらく眠れなくなったことがあった。イメージを見るのが怖くて、目を瞑るのが怖くて、懐中電灯を布団に持ち込んで本を読み限界まで眠くなって落ちるように眠る、という日々を過ごしていた時期がありました。
そのイメージというのは
自分の右手の親指の先が膨張し始め、自分の体を飲み込み、世界を飲み込んで、宇宙サイズにまで一気に拡がる
というもの。
そして、拡がった後はまたものすごい勢いで縮小し、今度は針の先ほどの小さな点になってさらにミクロの宇宙サイズにまでどんどん縮む。
膨張と縮小は数秒のうちに起こっていて、今思い出すと自分の呼吸に連動していた気がする。
拡大するときは全身にゾワゾワピリピリと静電気のようなものが駆け巡り、縮小するときは呼吸が何かにインターセプトされるような息苦しさを感じていた。自分と世界の境界線がどこにあるのか、分からなくなる。物理的には自分の境界線であるはずの皮膚なんてあまりに軽々と突き抜けてしまう感覚に、自分がこのまま壊れちゃうんじゃないかととても怖かったのを覚えています。
怖くて怖くて泣いてお母さんに助けを求めた時もあるんだけど、自分が感じているものや見ているものがうまく説明できなくて、聞いているお母さんも困り顔だったっけなぁ…
連動してよく思い浮かべていたイメージがいくつかあって
胎内で体を丸める赤ちゃん
巻貝をスパッと切った螺旋模様の断面図
モヤモヤと煙のように光る様々な色
天体望遠鏡で撮影したような鮮やかな宇宙
みたいなものが繰り返し繰り返し頭に浮かんで、そのイメージの間をすり抜けるように身体が膨張と縮小をジェットコースターのように繰り返し…
目を開けていても、この感覚とイメージは脳に直接流れ込むようにやってくるので、どうしようもない。
ただ、部屋が明るいとかなり見えづらく、暗いところでスイッチが入ったみたいに見えはじめることが多かった。
部屋を暗くして目を瞑ると、ほぼ瞬間的に世界と自分の境界が霧散して、今思えば宇宙と一体となるようなあの感覚…
あのとき蓋をせずにそのままあの感覚を研ぎ澄ましていたら、今頃どうなっていたんだろう?
それともあれは子供に特有な、なにかあの時にしか体験できない感覚だったのかな?
同じ体験をした人がいたら、どんな感じだったか、ぜひ語り合ってみたいです。連絡ください。
キノコでした。